アドバイザー:木内卓巳先生(元白陵高校)
将来のことが決めきれない、 自分はどこに向かっていけばいいのかわからない。
そんな生徒の心に寄り添う的確なアドバイス。大学受験に精通。相談には予約が必要です。
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受験相談窓口・木内卓巳先生のお人柄、 教育観をコラムで皆さんにご紹介させていただいています。
第2回
龍野高校では、 旧制中学の流れをくむ伝統校にはつきものの、その保守的な校風には違和感をおぼえつつも、顧問をしていた陸上部では個性的な生徒たちには恵まれていた。
私自身陸上には中学時代の経験しかなかったが、 素質を持った生徒が毎年入学してきて、滋賀、 鹿児島の全国大会に2回 (3人) 出場した。 どちらも決勝7位だった。
「もっと専門的指導力のあるコーチが指導をしていたら確実に上位入賞を果たしていたのでは」と、 選手たちには気の毒なことをしたという思いが残った。 この時代の選手についてはまた後にとりあげたい。
高校3年生の担任も経験し、 高校教師としての自信も少しついたころ、 姫路西高校から声がかかった。36歳の時だ。
そのころ、 龍野高校では2年生を担任しており、 卒業まで見届けず、 途中で異動するのは敵前逃亡のような気がし、せっかくの機会だがお断りしようと思った。
しかし、仕事と家事の両立にも限界がきていた家内に 「あなたの生徒さん達には代わりの立派な先生がおられるのよ。 自分がいないとダメになるというのは一種のおごりよ。うちの子にはあなたの代わりになるお父さんはいないのよ。特にうちのように障害を抱えた子にはね。できるだけ一緒にいてやって。」と言われた。
龍野高校の生徒たちには「すまない」 と心の中で手を合わせながら、 自宅に近い姫路西高校への異動を受けることにした。
道徳的な要素の強い受験勉強が第一義である龍野高校から、文武両道を掲げ、それを実践している多くの生徒がいる姫路西高校に入ると、 雲間から青空がのぞいたような爽快感をおぼえた。これこそ本当の高校だ!
やがて、当然のことであるがいろんなことが見えてきた。「我こそは選ばれし者だ」という『エリート意識』 についてであるが、その意識を教師自身も持ち、 生徒にも陰に陽にそれを植え付ける姿には違和感を感じた。
こういう意識に染まった教員が大半を占める中で、 私がひそかに尊敬し問題意識を共有できた体育の教員がこう言った。
「ここの生徒の大半は自分を抑えることが苦手で、 わがままだよ。いつも自分が自分がという意識が強すぎるんだ。人としての謙虚さがもっとほしい。」
体育の教員は、他の生徒とのかかわりや動きから生徒の姿をとらえるため、いい子悪い子、できる子できない子、という単純思考に陥らない。 意表をつく面白い味方を教えてくれることが多かった。